20代から80代まで——世代を横断する合唱の現場
逗子市を拠点とする混声合唱団・室内楽団Baroquartには、20代から80代までのメンバーが在籍している。合唱の経験がなくても参加でき、年齢も問わない。地元出身者を中心に構成されたこの団体では、世代ごとに異なる音楽的な感覚がひとつの演奏に混ざり合い、聴く側にとっても新鮮な印象を残す仕上がりになっている。逗子のほか鎌倉や葉山でも定期的に演奏会を開いており、近隣地域での認知度は年々広がっている。
音楽を通じた挑戦の場として設立されたアマートルアンサンブルは、将来的にプロの室内合奏団として活動することを見据えた組織だ。Baroquartと並行して運営されており、メンバーは技術面・表現面の双方で研鑽を積んでいる。個人的には、この二つの組織が同じ母体から生まれている点がBaroquartの活動に奥行きを与えていると感じた。
チケット価格と会場づくりに見る「気軽さ」の設計
演奏会の料金は手頃な価格帯に設定されており、クラシックのコンサートに初めて足を運ぶ人でも金銭的なハードルを感じにくい。ドレスコードもなく、普段着のまま入場できる。開場から開演までの時間にゆとりを持たせ、来場者が落ち着いた状態で音楽に向き合える空間をつくっている。プログラムの構成や会場レイアウトにも、専門知識がなくても楽しめる配慮が随所に見られる。
「クラシックは堅い」というイメージを持っていたが、実際に来てみると全然違ったという声が目立つ。フォーマルな空気を意図的に取り除くことで、家族連れや若い世代の来場も増えているようだ。こうした運営方針は既存のクラシック公演とは明らかに異なる路線を歩んでおり、リピーターの存在がその方向性を裏付けている。
企業・学校・福祉施設への出張演奏という回路
有料コンサートで得た収益を無償の演奏活動に充てる——Baroquartはこの循環を軸に、届ける場所の幅を広げてきた。企業向けには福利厚生としての出張コンサートを実施し、介護施設や医療機関では無料演奏会を定期的に行っている。小中高校への出張も続けており、児童・生徒が生の合唱やオーケストラに触れる機会を生んでいる。演奏する場所ごとに編成やスタイルを変える柔軟さも、現場からの評価につながっている。
ある介護施設での演奏後、涙を流しながら「昔よく聴いた曲だった」と話す入居者がいたというエピソードが印象に残る。経済的な事情や身体的な制約から演奏会場に足を運べない人へ、音楽を届けに行くという発想は単純だが、実行し続けている団体は限られる。有料と無料の二本立てで活動資金を回している仕組みが、この継続を支えている。
ヘンデル「メサイヤ」を軸にした古典作品への取り組み
Baroquartが繰り返し取り上げてきた演目のひとつが、ヘンデル作曲のオラトリオ「メサイヤ」だ。数百年にわたり歌い継がれてきたこの大曲に、初心者も経験者も同じ舞台で向き合う。一つの作品を全員で仕上げていく過程そのものが、個々の歌唱技術と団としての結束力を同時に引き上げる構造になっている。
練習を重ねるうちに「最初は譜面を追うだけで精一杯だったのに、気づけば音楽の中に入り込んでいた」と語るメンバーもいるという。歴史ある楽曲への敬意を保ちながら、逗子という土地に根ざした団体として発信を続ける姿勢は、今後の演奏会でも変わらないだろう。次回公演の情報はBaroquartの公式サイトに掲載されている。


